世界で獣医は考えた

"One Health"の実現のため国際保健の道を歩む獣医師の日々

One Health One World

No one left behind


国際保健

国際保健ってなんでしょう?

漢字の便利なところは字面でなんとなく内容が推測できるところです。国際保健も例にもれず、そのまま、国際的な保健ということになります。

ですが「保健」という言葉がそもそもあいまいなところもあって、じゃぁ具体的に何を指しているのよ、となります。これも実際人や組織によっていうことが異なる場合があるのですが、大体はヒトの健康とそれを維持するための公衆衛生、社会システム、開発のことを指します。

つまり雑にまとめてしまえば、国際保健とは世界中のみんなが健康になれるような世界を実現させるための国際的な取組のことです。私は国際保健でやっていることをを人に説明するときにはだいたい世界保健機関(WHO)がやってるのと似たようなことをやっているといいます。そうすると大体みんななんとなく理解してくれます(笑) 

 

とはいえ一応、2009年のLancetに掲載されたKoplanらによる論文 "Towards a common definition of global health"では国際保健は"the area of study, research and practice that places a priority on improving health and achieving equity in health for all people worldwide".(世界中全ての人の平等な健康の実現、向上を目的とした学術的、実務的取組のこと)というように定義され、一般的に広く浸透している定義といわれています。

 

ただ実際の国際的な定義ってまだ決まっていないので、正直言えば、灌漑のための巨大ダム建設によって結果的に下流地域に暮らす住人たちの水系感染症発症率を下げることになったら、そのダムを設計、建設を行ったエンジニアでも国際保健のプレイヤーと解釈できます。

ちなみに一言国際保健といってもカバーしている領域の広さからさらに細分化されているので、求められる専門性も広いです。私の研究テーマ(research interests)は感染症コントロールと食の安全(food security)の二点ですが、例えば大学院の同期たちは母子保健(Maternal and child health care)や災害時の保健システム(Health delivery)、リプロダクティブヘルス(Repuroductive health)などをトピックとしており、国際保健がカバーアップする範囲の広さをあらためて実感する機会となりました。さらにややこしいのは、今挙げたトッピクは全てさらに細分化されているので、研究テーマが同僚同士で丸かぶりするってことはあまりありません。もちろんテーマ間での流行り廃りもあるので、トッピクの人気に差があるのもごくごく一般的です(笑)

 

欧米ではGlobal Healthは意外とhot topicで大学生間でも比較的人気の高い学問領域なのですが、残念なことに日本ではまだまだ一般的に浸透していません。これはおそらくもともと公衆衛生自体が国内では医療従事者のための学問(しかもその医療従事者の間でも人気がないという…)と思われていたからだったからかもしれません。実際、今現在の日本国内の国際保健従事者の大半は医師や看護師のような、いわゆる保健専門家が大多数を占めています。

 

この文章を読んでもらえれば分かると思いますが、国際保健の入り口は一般の人が考えているほど難しくはありません。もちろん保健に関する専門知識があればとっつきやすい領域ではありますが、それ以外の知識を持っている人の需要も実際は多いです。例えば保険システム構築に重要な金融や政策の知識、環境整備のための工学や農学の知識、人々の健康リテラシー向上のための教育学やマーケティングの知識。一見保健には関係なさそうな知識でもそれは必ず間接的に人々の健康向上につながっているのです。

 

このブログによって日本で少しでも国際保健に興味を持ってくれる人が増えるように、またすでに国際保健の現場で働く人たちと情報を共有できるように頑張っていきたいと思います。